一途な御曹司と16歳の花嫁
その顔は恐怖でみるみる歪んでいく。


「なんか、こいつに用?
悪いけど、これは俺のなんだよね」


上から見下ろすように、その人を睨みつける伊織さまの表情は氷のように冷たい。


伊織さまは良家の御曹司だけど、執事の南さんに鍛えられていて柔道は黒帯だそうで、かなりお強いはず。


怒りのままに、松原さんを投げ飛ばしたりしないかハラハラした。


それほど、伊織さまが怒っているような気がしたからだ。


「2度と、こいつに構うなよ」


「あ、はい、す、すいません、失礼します」


そそくさと退散する松原さんを見て、心底ホッとした。


逃げ足が速いというか、あっというまに姿が見えなくなった。


彼の身の安全のためにも、早めに立ち去ったのは正解だ。
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