一途な御曹司と16歳の花嫁
「なにあれ?」


憮然としたままの伊織さまは今度は、私の方へ向きなおる。


あ、ヤバ。機嫌が物凄く悪そう。


私も、お礼を言ってこの場からすぐに離れたほうがいいかも。


「助けていただいて、ありがとうございます、伊織さま。あの、私はこれで」


そう言って逃げようとしたけど、腕を掴まれてすぐに捕まえられてしまう。


「さっきのやつは、なんだ?」


「え、知りません」


彼は松原さんって名前ですなんて言ったら、どんな被害が及ぶかわからない。


別に松原さんを庇いたいわけでもないけど、穏便に済ませたい。


「どうして、知らないんだ?告られてたんだろ?」


「ほんとに知らないんです。ああやって話しかけてくる人が何人かいて。いちいち覚えてられなくて」

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