聖女の魔力が使えません!~かわりにおいしい手料理ふるまいます~
突然話を振られたハッセは驚いたようだったが、ちらりとジョナスを見たあと、「後で言おうと思ってたんだけど、進路の希望を聞かれたんだ」という。

「進路?」

「来年からは生活魔法に加えて、専門職のための魔法訓練が入ってくるんだ。僕は……父さんと同じ料理人を目指そうと思ってるんだけど」

「だがお前、計算が得意だったろう。それを伸ばせば文官になる道もあると聞いているぞ」

「得意と好きは違うよ。イズミ様が作る料理はおもしろいし、僕はできれば、この料理を広める料理人になりたい」

嬉しいことをいってくれるものだと、いずみが顔をほころばせると、それを眺めていたアーレスはゴホンと咳ばらいをする。

「リドル、ジョナス、全員の食事をここに用意しろ。……ハッセ、お前はまだ幼い。世の中にはどんな選択肢があるのか知ってから結論づけるのもいいだろう。食べながら、城に仕える文官の仕事と騎士の仕事について話してやろう」

「え、あ、本当ですか。でも」

チラリとハッセがいずみの方を見た。
嬉しいのと不安なのとないまぜのような顔をしている。

「ハッセ、私の料理を気に入ってくれたのは嬉しいわ。でも、選択肢はたくさんあるのよ? いろんな可能性を知って、その中で一番を選んでくれたらいいわ。同じ家に暮らしているんだもの。私はあなたを、本当の家族みたいに思っているの」

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