聖女の魔力が使えません!~かわりにおいしい手料理ふるまいます~


翌日の、昼休憩。
アーレスが食堂のあまりおいしくない食事を、フォークで遊ぶようにつついていると、フレデリックがやって来た。

「だーんちょ、どうでした。昨日の休みは」

「どうってなんだ」

「聖女さま、実家に連れて行ったんでしょう? どうなりました。嫁姑のバトルとかありました?」

「お前なぁ……」

楽しそうなフレデリックにはあきれるばかりだ。

「至極順調だ。大体なんでその話をお前が知っているんだ」

「団長がなんで休みか聞いたら、副団長が教えてくれましたよ」

道理で、今日は妙にニヤニヤした目つきで皆から見られるはずだ。
副団長のルーファスはアーレスよりも年上なのであまりきつい言い方をするのは好かないが、後で釘を刺しておこう。

「順調の割には浮かない顔じゃないです?」

「……女性への贈り物は、なにがいいのか分からなくてな」

「は?」

怪訝そうなフレデリックに、相談しようか迷う。
こいつは軽そうだが、その分女性に対しての知識は豊富だろう。

「聖女にですか? 女性はドレスか宝石を贈っておけば間違いないと思いますけど」

「あまり派手な格好をさせたくないんだ」

「うわ、団長、のろけですか? ほかの男に見せたくないってやつですか」

フレデリックが気持ち悪い感じに相好を崩す。アーレスは思わず目をそらし、頷いた。

(……似合わないからだ。とは、いずみの名誉のために言いたくないな)

「まあ、そんなところだ」

「ふーん。聖女への贈り物ねぇ……」

フレデリックは腕を組んで考え込む仕草をする。
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