聖女の魔力が使えません!~かわりにおいしい手料理ふるまいます~

「そうだ! 団長、知ってます? エイドの森の近くにあるリリカという村なんですが。伝統的な文様刺繍の小物を作ってるんです。ほら、これなんですけど」

フレデリックが見せてくれたのは、紺色の下地に、黄緑や黄色、オレンジいった明るい色合いで、文様化された植物が刺繍されていた財布だった。

エイドの森は王都から北東に馬で一時間ほど走った先にあり、国土の中心にある中では最も深い森だ。
当然、獣の類が住み着いていて、近くにある農村が時折被害がある。その狼退治には王都の騎士団から派兵するのが常だ。

「前回の派兵のときに見つけて、買ったんですよ。他にも女性向けの花をあしらった髪留めとかたくさんありましたよ。王都で売り出せば売れると思って買ってきたんですけど、思ったより広がらなくてですね」

「そりゃお前見たいな男が持ち歩いていたところで、誰も見やしないからだろう。そういった流行を生み出すのは女性だぞ。母親にでも頼んで茶会かなにかで広めてもらうのが一番だろう」

「あー、そうなんすね。まあそれはいいんですよ。でね、俺たち第一班にエイドの森の狼退治の依頼が来てるの知ってるでしょう? ぜひ! 団長もご一緒に!」

「お前……。俺を連れて行って楽したいだけじゃないのか?」

「さすが団長、呑み込みがお早い! だって去年、俺たち、かなり苦戦したんですよ。でも団長がいれば一発じゃないですか」

「お前はもう少しプライドをもて」
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