聖女の魔力が使えません!~かわりにおいしい手料理ふるまいます~
調子のいいフレデリックにはあきれるが、その刺繍はなかなかに精巧な出来だった。
(いずみには似合うかもな。変にごてごてした宝石よりも、彩が鮮やかなほうが、あの黒い髪に映えるだろうし……)
想像してみれば、悪くなかった。いや、むしろいい。宝石よりもずっと彼女に似合う。
「……まあいい。俺も同行しよう。日程調整は終わっているのか?」
「来週の頭から四日間の予定です」
「副団長と予定を調整しよう。どちらも不在にするわけにはいかないからな」
「はいっ。ぜひぜひ、ご同行いただけたらありがたいです!」
フレデリックが敬礼して戻っていく。どうにも図々しい男だが、嫌いではない。下手におびえられているよりはとっつきやすい気もする。
執務室に戻り副団長と予定を調整したアーレスは、望み通り来週からのエイドの森狼退治に同行することが決まった。