聖女の魔力が使えません!~かわりにおいしい手料理ふるまいます~
一方、アーレスは駆け込んできたフレデリックにたたき起こされた。
あの後、フレデリックはエイダとセイムスに散々叱られた。不用意に確証のないことを言うからだ、とふたりは頭ごなしに彼を非難していたが、楽しんで聞いていたくせに、とフレデリックは少し不満だ。
それから彼は、イズミを慰めるために探したが、彼女にあてがわれた部屋がどれかわからず、とりあえず報告しなければと、団長に怒られるのを覚悟してやって来たのだ。
「なんなんだお前は!」
「すいません、団長! 俺、聖女様に余計なこと言っちゃったかもしれないんです」
「はぁ?」
「団長がかつてミヤ様にぞっこんだったって……」
「……は?」
アーレスは、思わず頭が真っ白になった。
(いや、なんだそれ。間違いじゃないが。だがなんで今それをイズミに言う。というか、何でこいつが知っている?)
激しく巡る思考は言葉にはならず、ただゆらりと拳だけが宙に浮く。殴られると咄嗟に判断したフレデリックは、素晴らしき反射力で一気に後ろに後ずさる。
「落ち着いてください。聞いたのはルーファス様からです。そして、別に密告したわけじゃなくて、世間話していたのを聞かれちゃっただけなんすよ」
「ほう、お前と誰で俺を話の種にしていたんだ?」
「サイモンとエイダ……じゃなくて! 奥様ちょっとショック受けちゃったみたいでですね! 泣いちゃったようなので一応ご報告しておこうかと」
「一発殴らせろ」