聖女の魔力が使えません!~かわりにおいしい手料理ふるまいます~
「ほう、堅物のアーレスにここまで言わせるのか。やるな、いずみ。やはり猛獣使いじゃないか」
ははは、と和やかな空気に包まれる。
やがて、昼にいずみが作ったプリンが国王のもてなし用として運ばれてきた。
「これ、私が作ったんです」
「ほう? いずみは料理をするのか」
「ミヤ様はしなかったんですか?」
プリンを一口頬張ったオスカーは、お気に召したのか、匙を口とカップの間で何度も往復させた。
「しなかったな。ミヤ様は博識だったが、動くのはあまり好きではなかったようだ。ダムや治水に関しても、知識だけを提供して後は宰相が采配して役人たちが動くという感じだったな。昔、『どうしても和食が食べたい』と言って、味噌と醤油とかいう調味料を作らせたが、それも何年も試行錯誤を重ねてやっとできて、……だが、望んだ味の料理は作れなかったと言っていたな」
「そうなんですか」
でも、その試行錯誤のおかげで、いずみは最初から味噌と醤油にありつけたのだ。感謝しなければなるまい。
「その、和食……とかいうやつですが、イズミならば作れますよ。私は家で作ってもらいましたが、普段の食事にはない味で、非常にうまい。どうです、オスカー様。我が国でもコメをつくりませんか」
「コメ?」
「ええ。隣国では主食として扱われているものですから、栄養もありますし。気候的にもそこまで変わらないので、向いていないわけではないと思います。栽培技術者を数名呼び寄せ、技術指導を頼めばすぐに広まるでしょう」
「ふうん。いいだろう。イズミ、一度その料理を私に作って見せるといい。うまければ国での栽培について許可をだそう」
「本当ですか!やったぁ」
アーレスの口添えのおかげで、コメも作られるようになりそうだ。
いずみは感謝し、アーレスの怪我が落ち着いたら料理を作りに行くことを約束した。