聖女の魔力が使えません!~かわりにおいしい手料理ふるまいます~
(……凄いな。十八なんて学生だったろうに、その知識はどこから)
異世界から来たというだけでなく、ミヤ様は普通にできる子だったようだ。
彼女は二十歳のときに、この国の宰相と結婚したらしい。
子供はできなかったそうだ。
生きていれば五十八歳だが、十年前に亡くなったので享年四十八歳だという。
年をとっても美しく、優しく、気高く。まさに聖女……と言うのは神官とオスカーの談だ。
話せば話すほど、オスカーが聖女ミヤに心酔しているのがわかる。
母親が亡くなってから、ミヤ様がオスカーの母親代わりになってくれたことにも起因しているのだろう。
まだ幼くて母親を亡くしたことも分からなかったときとは違い、ミヤ様が亡くなったとき、オスカーは十一歳。
ものすごい嘆きようで、三日間部屋から出てこなかったと神官から聞いた。
ミヤ様の日記にも、幼いオスカー様のことがたくさん書かれていた。まるで、母親のような目線で。
子どもができなかったというから、それはそれはかわいがっていたのだろう。
(それ自体は別にいいの。オスカー様のいい思い出だよね)
ただ、ミヤ様を基準にしているから、聖女に対する期待値が高すぎるのだ。
(ちゃんと見えてるんだから……)
オスカーはいずみを見るたびにひそかにため息つくし、神官はいずみの魔法の習得の悪さを嘆きながら「ミヤ様……」と呟く。
(傷つくんだよ。たしかに私はなにも出来ないけど、無理に連れてこられたんだからそんなこと言われる筋合い無いっての)
「悔しい……」
冗談交じりにつぶやいたつもりが、結構本気で胸に刺さる。
日本にいても、目立たず役立たず。異世界に来てまでこうだなんて悔しすぎる。