聖女の魔力が使えません!~かわりにおいしい手料理ふるまいます~
(二十一歳のオスカー様だって何なら恋愛対象内だよ)
オスカーは華麗にスルーすると、「言っておくが、相手にも選ぶ権利はあるからな」とひどいことをあっさりと言った。
「まあ落ち着け。最後のひとりが大本命だ。騎士団副長アーレス・バンフィールド。伯爵家の次男で爵位は無いが、これまでの功績と、聖女を娶る大役を考慮し、騎士団長の位と伯爵位を与える予定になっている」
「爵位で釣ったんですか? お年は幾つで」
「三十六歳だ。ちょっと変わりものでな。夜会にも出ず、ずっと独身だ。もっと前から騎士団長へという話も合ったのだが、本人の希望で辺境地で国境警備にあたっていた。いい機会だし、呼び戻すことにした。今後は王都勤務で後進を育てて行ってもらう予定だ」
「はあ」
三十六歳もたいがい年上だが、独身というところでいずみも好感を抱く。
だが同時に不安も沸き上がる。
こんなに結婚年齢の早い世界で、三十六歳まで未婚ということは、よっぽど偏屈だったり不細工だったりするのではないか。
「変な人間ではないぞ。戦地で陣頭指揮を取りたがるから婚期を逃しているだけで、人柄は誠実だし、見た目も悪くはない。多少年齢は上かもしれんが、人材としては一押しだ」
いずみの邪推を知ってか知らずか、オスカーがそんなことを言う。
誠実な人柄……ってことは、頼まれたから断れなくて、仕方なく結婚するといっているのかもしれない。
少しばかり申し訳ない気分になりつつ、いずみは気を取り直してオスカーに尋ねた。