聖女の魔力が使えません!~かわりにおいしい手料理ふるまいます~
「……他の候補者は?」
「申し訳ありません。そこまでの情報は分かりかねます」
「ふむ」
手紙だけで断るのは簡単だ。しかしアーレスも、相手が召喚聖女というところには興味があった。
「こういう話の選択権は女性にある。とにかくその夜会とやらには伺おう」
そう言ったあと、アーレスは書簡に二枚目があることに気が付いた。乾いた指ではなかなか重なった紙がめくれず、数分格闘したあと、おもむろに読み始める。
「……は? 騎士団長昇格? さらに聖女を娶るならば、爵位の叙勲だと?」
聞いてないよのオンパレードに、アーレスの眉間には皺が浮き上がった。そのいら立ちは全身に伝わっていたのだろう。怒りの気配を察した伝令の動きは素早かった。
「しゅ、出席ということで国王様に報告いたします。ではっ、失礼いたします!」
「あ、待て……」
呼び止めたときにはもう遅く、伝令は姿を消してしまっていた。
「くそっ、なんだこれは。俺は爵位などいらないぞ? 大体、もので釣ろうというような態度が気に入らない」
髪をくしゃくしゃとかき回し、収まらない怒りのぶつけ所を探す。
「……仕方ない。夜会にて国王に直接苦言を申し入れることにしよう」
若き国王オスカーは、民の人気も高い賢王ではあるのだが、いささか調子に乗りやすいところがある。
諫めるのも臣下の仕事だ。
異世界から呼びつけた聖女を、余りもののような男に押し付けようとするなど言語道断。
「それにしても聖女か……」
アーレスは机に立てかけていた自身の剣を鞘から出す。あの日、銀色の光とともに、この剣に力をくれた聖女。
窮地を救ってくれた聖なるお告げ。
銀色に鈍く光る刀身を窓に向け、誓いを立てるように胸の前に構えてつぶやく。
「ミヤ様……これもあなたの思し召しなのか?」
かつてセルティア王国のすべての国民に愛された聖女ミヤ様。
まだ彼女の功績が色濃く残されている今、なぜ聖女を呼び出したりしたのか。
王に対して不敬だとは思うが、自然に舌打ちが出るのは止められなかった。
「申し訳ありません。そこまでの情報は分かりかねます」
「ふむ」
手紙だけで断るのは簡単だ。しかしアーレスも、相手が召喚聖女というところには興味があった。
「こういう話の選択権は女性にある。とにかくその夜会とやらには伺おう」
そう言ったあと、アーレスは書簡に二枚目があることに気が付いた。乾いた指ではなかなか重なった紙がめくれず、数分格闘したあと、おもむろに読み始める。
「……は? 騎士団長昇格? さらに聖女を娶るならば、爵位の叙勲だと?」
聞いてないよのオンパレードに、アーレスの眉間には皺が浮き上がった。そのいら立ちは全身に伝わっていたのだろう。怒りの気配を察した伝令の動きは素早かった。
「しゅ、出席ということで国王様に報告いたします。ではっ、失礼いたします!」
「あ、待て……」
呼び止めたときにはもう遅く、伝令は姿を消してしまっていた。
「くそっ、なんだこれは。俺は爵位などいらないぞ? 大体、もので釣ろうというような態度が気に入らない」
髪をくしゃくしゃとかき回し、収まらない怒りのぶつけ所を探す。
「……仕方ない。夜会にて国王に直接苦言を申し入れることにしよう」
若き国王オスカーは、民の人気も高い賢王ではあるのだが、いささか調子に乗りやすいところがある。
諫めるのも臣下の仕事だ。
異世界から呼びつけた聖女を、余りもののような男に押し付けようとするなど言語道断。
「それにしても聖女か……」
アーレスは机に立てかけていた自身の剣を鞘から出す。あの日、銀色の光とともに、この剣に力をくれた聖女。
窮地を救ってくれた聖なるお告げ。
銀色に鈍く光る刀身を窓に向け、誓いを立てるように胸の前に構えてつぶやく。
「ミヤ様……これもあなたの思し召しなのか?」
かつてセルティア王国のすべての国民に愛された聖女ミヤ様。
まだ彼女の功績が色濃く残されている今、なぜ聖女を呼び出したりしたのか。
王に対して不敬だとは思うが、自然に舌打ちが出るのは止められなかった。