聖女の魔力が使えません!~かわりにおいしい手料理ふるまいます~
国王は声を詰まらせたアーレスを見て、朗らかさを取り戻した。
「聖女の件については……まあ、安易に呼び出したことは認める。そしてその娘が、期待通りではなかったこともな」
素直に認め、両手を降参といった風に上げたので、アーレスは少しばかり怒気を緩めた。
若き国王オスカーが、ミヤ様を母親同然に思っていたのは周知の事実だ。チャンスがあれば、もう一度聖女召喚をと前々から狙っていたことも広く知られている。
「どういった女性なんです」
「ミヤ様とは全然違う。何の能力もなく、魔法も教えても習得しない。容姿も十人並みだ。年齢のことだけではなく、とても王妃にするわけにはいかん。だが、容姿が気に入らないからといって捨て置くわけにもいくまい。呼び出したのはこっちだ。それで、誰か彼女を娶る人間を探していたのだ。候補者はお前を含め三人だ」
「他の候補者はどなたです?」
「もう城には来ている。クラウディオ・パルティス子爵と、イーサン・ネクロイド伯爵だ」
パルティス子爵は知っている。愛妻家で娘を溺愛していたはずだ。奥方が亡くなったとは聞いているが、再婚に応じるかどうか。
ネクロイド伯爵に関しては年が行き過ぎてる。どこが熟考だ?
再び怒りが沸き上がってきたアーレスは、遠慮もなく言い捨てた。
「それが熟考した結果というなら、あなたの頭は空洞なのではないですか」
「お前もたいがい不敬だぞ。……そう思うなら、お前が彼女をもらってやってくれ。条件としてはお前が一番いいと私は思っている。聖女を娶るに必要な爵位はくれてやるから」
「爵位などいりません。それに、選ぶのは彼女の方であるべきです」