聖女の魔力が使えません!~かわりにおいしい手料理ふるまいます~
婚姻の日、アーレスが王城に迎えに行くと、白のドレスを着せられたいずみが待っていた。
(……この王城の化粧係はどうにも派手好きなのだろうか)
ドレスの色に似合わぬ赤の口紅と、濃い頬紅が浮いて見える。ジナにはもう少し彼女にあった化粧をするよう忠告しておこうとアーレスはひそかに誓った。
「アーレス様。本日よりよろしくお願いいたします」
聖女……いずみは小さく頭を下げる。二十六歳だというが、小柄な彼女を見ているともう少し幼い印象を受ける。
「ああ」
並んで立っていると、オスカー陛下がアーレスの背をバンと勢いよく叩いた。
「聖女を頼むよ、アーレス。騎士団のこともね」
「分かっていますが。……騎士団もどうしてあんなことになってるんですかね」
先日顔出ししてきた王都の騎士団は、完全に腑抜けていた。
どうして、いつの間に。
かつてアーレスが王都にいたときは、規律正しく筋骨隆々とした男たちが闊歩していたものだ。
そのうち、名を馳せていった者たちが、小競り合いの続く辺境地へとそれぞれ派遣されていった。
残されたのは、平和な王都とそこそこの能力を持った騎士団員。
その残された団員の中には甘えやたるみがあったと言わざるを得ない。背格好はまあ見れないこともないが、圧倒的にスタミナが足りないのだ。
長丁場の戦いなど、最近ではそう起きないが、それにしたってこれが騎士団かと思うと情けなくなる。