聖女の魔力が使えません!~かわりにおいしい手料理ふるまいます~

リドルは主人夫妻を見て、にっこり笑うと、屋敷の中へと案内してくれた。
そこには今いる使用人が勢ぞろいしていた。
アーレスは人が揃ってないといっていたが、料理人と従僕がひとりずつ、いずみ付きになるという侍女に、メイドがひとり。そしてリドルと計五人もいる。

(十分じゃない? たしかにお屋敷は大きいけど、使用人の方が多いじゃない)

そのうちに、小学生くらいの子供がふたり、「奥さま、おまちしておりました」やって来て花束をくれた。

「ありがとう」

女の子と男の子ひとりずつだ。住み込みの使用人の子供らしい。

そのあとは、侍女のジナに部屋に案内してもらう。
ジナは三十代の女性だ。家族で住み込みで働いていて、従僕であるコールが旦那様らしい。花束をくれた男女の子供のうち、女の子の方がジナの子供だそうだ。

「届いていた荷物は、部屋に入れてあります。クローゼットには旦那様のお母さまより頂いたドレスが入っております」

「え? お義母様?」

「ええ。実は私、もともとはアーレス様のご実家で侍女をしていたんです。遠征ばかりしていたアーレス様では、屋敷の設えなど何も分からないだろうと心配した奥様が、細かなところは指示されたんですよ。異世界から来た奥方が困らないようにと、私や夫が務めさせていただくことになりました」

それは思わぬ気遣いだった。いずみの胸は感謝で震える。
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