聖女の魔力が使えません!~かわりにおいしい手料理ふるまいます~

「どうしよう。お礼しないと。式もしないなんて失礼だったんじゃないかしら」

「おいおいで大丈夫ですよ。大奥さまは鷹揚な方ですから。それより、着替えのお手伝いをいたします。すぐ夕食になりますので。奥様にとってはなにもかもが新しく分からないものなのですから、私になんでも聞いてくださいね」

「心強いわ。ありがとう」

「それにしても、綺麗な御髪ですねぇ」

この世界の人は、金髪もしくは茶系の色合いの髪が多い。
ちなみに、王家に連なるものは銀髪が多いのだそうだ。黒髪はとても珍しいらしいが、ミヤ様がそうだったからか、悪い印象はないらしい。

髪を緩く結ってもらい、シンプルなクリーム色のドレスを着せられる。

「お化粧濃いですね」

ジナははっきりそう言うと、柔らかいガーゼで軽く顔の表面を拭きとった。

「奥様のお顔なら、このくらい薄い方がお似合いですよ」

目元にアイラインを入れ、口紅を薄く引く。ジナの化粧はあまりくどくなく、いずみは心底ホッとした。

「ありがとう、ジナさん」

美人になったとは言わないけれど、シンプルな化粧とドレスのおかげで少しは見られるような状態になった。
鏡の中の自分を見て、いずみは気分が上がってくる。

「奥様は肌の色が白いですね。今後のドレス選びが楽しみです」

ジナはジナで、身支度を整えるのが好きなのだろう。いずみの髪をいじりながら心底楽しそうにしている。
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