聖女の魔力が使えません!~かわりにおいしい手料理ふるまいます~
「そうですね。大奥様が一番ご執心なのは、ご長男様の末娘、ヴェラ様ですね。今年7歳になられるお嬢様です」
「お孫さんか……」
(だったらお孫さん向けのお土産でもいいかもしれない。女の子なら、かわいいものが好きだろう。お花とか、お菓子にしても可愛らしいもの……)
「お菓子の家?」
ハタとひらめいたいずみのつぶやきに、ジョナスが眉を顰める。
「お菓子の家たぁなんですかい」
「その名のとおりよ。お菓子でミニチュアハウスを作るの」
こんな感じで、と図解してみるも、ふたりはピンときていないようだ。
「説明するよりやってみたほうが早いかも。クッキーの材料はあったよね。あと、卵と粉砂糖がいるな。ねぇジョナス。砂糖ってどのくらい種類がある?」
「砂糖ですか? 普通のものと、結晶化しているものがありますが」
「だったら……ミキサーはないよね。うんと細かく粉砕したいんだけど」
ジョナスは“ふんさい”と一度口の中で繰り返した後、瓶に砂糖をスプーン一杯分入れて戻ってきた。
そして、瓶の中に指を突っ込み、小さく呪文を唱える。
すると、中の砂糖がパンとはじけて、瓶中に広がった。
「こんな感じですか? 破砕の魔法ですが」
確認すると砂糖の粒は先ほどよりも細かくなっている。粉砂糖というにはもう一声という気もするが。
「ああそんな感じ。粉みたいに細かくしたいの」
「何度か繰り返せばできると思いますよ」
「すごい! さすがジョナスさん!」
いずみの拍手喝采に、ジョナスもまんざらでもなさそうだ。