聖女の魔力が使えません!~かわりにおいしい手料理ふるまいます~
言われた通りに、クッキー生地をジンジャーマンの形に切る。ナイフで切るのはやはりちょっと難しい。今回は仕方がないけれど、金属加工人に頼んで、型を作ってもらわないとならないだろう。
切り終わったそれを見て、アメリは「お人形さんだー」と喜んでくれた。
他にもクマの形や猫の形に切り抜き、焼くのはジョナスに任せる。

焼いている間にスカーレットが、カラフルなチョコレートを持ってきた。

「リドルさんが隠し持っていたので、もらってきました」

なんと、日本では珍しかったルビーチョコレートだ。
色は苺チョコのようなピンク色。着色料を入れたわけではなく、天然でその色合いで、若干のベリー風味がある。
その代わり、茶色のチョコレート特有の香ばしさはない。

「こちらを使って飾ってみてはいかがですか? 色合いが鮮やかになりますし」

「うん! ありがとう」

アイシングの白と、ルビーチョコレートのピンクがあれば、見映えがするだろう。屋根にアイシングで模様を描き、チョコを溶かしてスプーンで塗っていくと、ずいぶんと華やかになった。

「ここにピンク入れると可愛いですわ」

なにより、スカーレットの指摘がいちいちもっともなのだ。

(これってもしかして、私にはないセンスってやつなんじゃない?)

調理するのにどうしても必要な機材を望む通りに扱ってくれるジョナスと、盛り付け飾りつけのセンスのあるスカーレット。

(この夫婦がいてくれるなら、もっといろいろなことができるかもしれない)

胸の奥に、ワクワクが沸き上がってきて興奮してくる。
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