聖女の魔力が使えません!~かわりにおいしい手料理ふるまいます~
やがて完成したお菓子の家を前に、アンリとハッセは目をキラキラさせていた。

「星形のクッキーを入れてもいいよ。おもちゃ箱みたいじゃん」

「窓があったらいいんじゃない?」

アンリの提案に、いずみも頷く。たしかに、窓がないから、小屋っぽさが増すのかもしれない。
でもどうせ窓を作るなら、ちゃんとガラスっぽくしたいから……。

「ジョナスさん、飴ってあります?」

「もちろん、あるよ」

飴やキャラメルは、長期間の旅をするときの栄養補給にと昔からつくられているらしく、割といろいろな種類がある。
それこそ、花の色素で色付けしたようなきれいなものも。

「この飴を溶かして、クッキーに穴を開けた部分に注ぎたいんです。そして固まれば窓みたいになりません?」

「ほう?」

再び改良版のパーツを作る。生地を成形するところまでをいずみがやり、ジョナスが焼き、組み立てをいずみとスカーレットで行った。
そうして出来上がったもう一つのお菓子の家は、格段のかわいさだ。

「かわいい! 欲しい」

「俺も俺も」

子どもたちも今度は前のめりである。

「じゃあこの馬小屋みたいなほうはみんなで味見にしましょうか」

「奥様、ついに自分で小屋って言っちまったなぁ」

皆が笑い出し、いずみも思わず声を立てて笑ってしまった。

お土産も決まり、一安心。三日後はついに、バンフィールド伯爵家へと向かうのである。


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