聖女の魔力が使えません!~かわりにおいしい手料理ふるまいます~
アーレスが腕を差し出したので、そこに手をかける。
玄関に入るまでに三段ほどの階段があり、そこに黒の絨毯が敷かれていた。
彼に支えられながら階段を上り、紋章の刻まれた扉をくぐると、天井の高い玄関ホールへと出た。
大理石で作られた床が磨かれていて、天井からの光を反射している。その天井にも、浮彫のような装飾が施されていた。人が通るところには赤の絨毯が引かれていて、壁面には宗教画が飾られていた。
通された部屋は大きめの応接室で、パステルブルーの壁紙の部屋だった。長椅子にも壁紙と揃いの柄の織布が張られており、マントルピースは白いレンガで作られている。
促されるまま長椅子の腰掛けて、改めて挨拶をする。ジナは後ろに控えるように立ってくれていた。
……と、出入りする使用人たちの合間を縫って、小さな女の子が、扉の外で動いているのが見えた。
いずみの視線の動きに気づいたセリーナが、呆れたようにため息をつく。
「やれやれ、さっきの話をちゃんと聞いていたのね。孫娘よ。中に入れてもいいかしら」
「もちろんですわ」
「いらっしゃい、ヴィラ。お行儀よくね」
言われて、ぴょこりと顔を出したのは、柔らかそうな金髪の少女だ。
ドレスはずいぶんと装飾過多でごてごてとしていたけれど、それを着こなせているのだからすごい。