聖女の魔力が使えません!~かわりにおいしい手料理ふるまいます~
「初めまして、聖女様。ヴィラと申します。お母さまも聖女様に会いたがっていたの。でも今日は断れないお茶会が入っていたんです。どうかお許しくださいね」
お行儀よく挨拶をされ、顔を見合わせたときはやはり少し怪訝な顔をされたけれど、いちいち気にしていてはキリがない。先ほどの出迎えで少し吹っ切れてもいた。
「とんでもない。急な訪問のお願いをしたのはこちらですもの。それよりヴィラ様、お土産があるんです。私の世界にあるお菓子を再現したものなの。気に入ってもらえると嬉しいのだけど」
「わあ! 嬉しいです。ありがとうございます」
どれだけしっかりしているように見えても中身は子供だ。やはり、お菓子という言葉には弱いらしい。
ちらちらと祖母に視線を送り、「開けていいわよ」と許可を取ると、すぐに包んでいる箱を開け始めた。
「うわあ……!」
クッキーで作ったお菓子の家に、飴でできた窓や、ジンジャークッキーの小人たち。チョコレートで飾り付けた上から、粉砂糖を散らしたので、まるで雪が降った後のように見える。
「可愛い。おばあ様見て? こんなに可愛いお家!」
「食べられるので、鑑賞したあとはちゃんと召し上がってくださいね」
「すごい! すごい! でもお父様とお母様とお兄様とお姉様に見せなくちゃ!」
「そうね、ヴィラ。みんなに見せてあげましょうね」
孫娘の気に入りように、セリーナはすっかりほだされている。