クローゼット番外編～愛する君への贈り物

「おい見ろよ。すごく立派な馬車だな。」

ある日、町にいかにも金持ちそうに見える豪華な馬車が停まっていた。
馬も毛並みが良く、とても姿が良い。



薬草を抱えて家に戻ると、お客がいた。
それは特別なことじゃない。
薬を買いに来たり、症状を話して調合を頼みに来るんだ。
きっと、さっきの馬車はこのお客のものだろうと思った。
立派な身なりをした体格の良い男性と、金色の長い髪をうねらせた少女が母さんの向かいに座って、そして、その後ろに使用人らしき男女が立っていた。
どこかの貴族だろう…そんなことを思った時、少女がおもむろに振り向いた。



一瞬で、その青い瞳は僕を捉えた。
なんて綺麗な子なんだろう…
透き通るように白い肌…目が大きくて鼻筋が通っていて…本当にお人形さんみたいに綺麗だ。
ただ、唇の色だけがくすんでいて、そのせいで体調が悪く見える。
きっと、今日はこの子のために薬を買いに来たんだろう。



その子は、しばらくみつめた後…俺に向かって急に微笑んだんだ。
そのことに俺は、びっくりしたっていうのか何ていうのか…
とにかく、ものすごく焦ってしまって、俺はその場から逃げ出してしまった。