クローゼット番外編~愛する君への贈り物
それが、俺とミシェルの初めての出会いだった。



それから、ミシェルたちは定期的にうちに来るようになった。
きっかけは忘れてしまったけど、いつしか俺とミシェルは友達のような関係になっていた。
とはいっても、母さんが薬を調合する間、他愛ない会話をするだけのことだ。
ただ、それだけのことなのに、俺はミシェルが来ることが楽しみで仕方なかった。



ミシェルは、トルスの少し東の大きな町・ダースに住む貴族の娘だった。
幼い頃から体が弱く、医者に診せても芳しい結果が出ないため、トルスに薬を買いに来るようになったのだという。
母さんの薬が効いているらしく、ミシェルは最初に来た頃に比べて元気そうになって来た。
唇の色も赤っぽくなって来たし、頬のあたりも少しふっくらしてきたように思った。



「最近、体調はどう?」

「もう…なによ、ジョッシュ。
いつも体調のことばかり訊くのね。」

「え?だって……やっぱり気になるから…」

俺がそう言うと、ミシェルは小さな溜め息を漏らした。



「……お陰様で、だいぶ良くなったわ。
先週は、久しぶりにおばあ様のところに行って来たのよ。
遠いから、なかなか行けなかったんだけど、お薬のおかげで行けるようになったの。」

「そう…良かったね。」

「ええ…とても嬉しいわ。
もっと元気になって、いろんな所を旅行してみたいわ。」

「うん、いつかきっと出来るようになると思うよ。
なんたって、母さんの薬は良く効くからね。」



そんな会話を交わすだけで、俺はとても満ち足りた気持ちを感じていた。
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