クローゼット番外編~愛する君への贈り物
(懐かしい……)
やっぱり、最初に感じたのは、その想いだった。
歩く度に、ぼやけていた記憶が鮮明なものに変わって行く。
もう俺を待つ者は誰もいないのに…
元々、俺には母親しかいなかった。
俺が幼い頃は、祖母がいたらしいが、俺は祖母のことは少しも覚えてはいない。
父親もいなかった。
死んだのか、別れたのか…気にはなりつつ、なぜだかそのことを訊ねたことはなかった。
訊いたら母親が悲しみそうで…それで訊けなかったのだと思う。
なぜ、そんな風に感じたのかはわからないが…
(あ……)
俺の家がまだあった。
誰も住まなくなると、家は傷むと聞くけれど、見た目には当時とあまり変わらない感じだ。
扉の前に立ち、少々戸惑った後に扉を叩いた。
もしかして、この町に来た誰かが住んでいたら…
そんなことを考えてのことだった。
だけど、誰も出ては来なかった。
俺は、ドアノブを回した。
蒸れたかび臭い空気だった。
この扉が開けられたのは、おそらくかなり久しぶりのことだったんだろう。
ギシギシ言う床は、当時のまんまだ。
「……ただいま。」
俺の小さな声に答える者はもちろんいない。
やっぱり、最初に感じたのは、その想いだった。
歩く度に、ぼやけていた記憶が鮮明なものに変わって行く。
もう俺を待つ者は誰もいないのに…
元々、俺には母親しかいなかった。
俺が幼い頃は、祖母がいたらしいが、俺は祖母のことは少しも覚えてはいない。
父親もいなかった。
死んだのか、別れたのか…気にはなりつつ、なぜだかそのことを訊ねたことはなかった。
訊いたら母親が悲しみそうで…それで訊けなかったのだと思う。
なぜ、そんな風に感じたのかはわからないが…
(あ……)
俺の家がまだあった。
誰も住まなくなると、家は傷むと聞くけれど、見た目には当時とあまり変わらない感じだ。
扉の前に立ち、少々戸惑った後に扉を叩いた。
もしかして、この町に来た誰かが住んでいたら…
そんなことを考えてのことだった。
だけど、誰も出ては来なかった。
俺は、ドアノブを回した。
蒸れたかび臭い空気だった。
この扉が開けられたのは、おそらくかなり久しぶりのことだったんだろう。
ギシギシ言う床は、当時のまんまだ。
「……ただいま。」
俺の小さな声に答える者はもちろんいない。