The Last -凶悪-
“そんな沢村君。
ズバリ・・そのパワーの源は~?”
“「やっぱり・・お母さんのご飯です。」”
場面変わって今度は青年の自宅にカメラが向かう。
キッチンでフライパンを振る母親のカットの後、食卓に彩り良い夜ご飯が並んだ。
“「・・はい。何とか・・1勝してくれたらいいなぁって・・。」”
“「やっぱり野球を通じて子供が成長してくれるのがとても嬉しいです」”
“「栄養バランスを考えて献立を決めるのがなかなか難しくって・・
私もこの2年半は日々勉強させてもらいました」”
控えめに笑いながらインタビューに答える母親。
どこか奥ゆかしさを感じる、
品の良さそうな女性だった。
“注目の一回戦は今月18日。
親子二人三脚で歩んできたエースナンバーへの道。
果たして沢村くん、
悲願の1勝なるでしょうか・・・!!?”
13分ほどのVTRが終わると、
胸ポケットに挿したカメラ越しで一緒に映像を見たヒデさんと通信を取る。
「どうでした?」
『・・・・・・・・・・・・・・。』
「・・・・・。」
無言でも何が言いたいか伝わった気がした。
確かに・・この青年を恨むような人間がいるのか・・?
人柄も良さそうで、チームメイトに妬まれるようなキャラクターにも見えない。
「ヒデさん。やっぱり怨恨って考えるのは強引じゃないですか?」
『判断するのはもう少し待ちましょう。
2件目の妊婦女性の映像も見たいです。』
「分かった。
放送局が違うのですぐに移動します。」
『こちらも映像が見つかるといいんですが・・。』
「大丈夫ですよ。
学生時代は毎年ちゃんと募金してたんで。」