The Last -凶悪-
“「もう一度やり直そうって。
そう話し合って決めました。」”
女性だけでなく、
その夫となる男性も登場して、
懸命な治療の様子だけでなく、
夫婦の絆が再生されていく様子も描かれて・・一つのドキュメンタリーを見ている感覚だった。
“迎えた、体外受精の結果が出る日。
待合室で待つ寺岡夫婦の表情にも緊張の色が現れる”
俺と一緒に見ていた報道スタッフさん達。
時折鼻をすする音が聞こえてきた。
診察室に呼ばれた夫婦。
実際の放送時はこのタイミングでCMを入れたのか、
“この後、感動の結末が”
という字幕が映し出された後、
場面は泣きながら肩を寄せ合い診察室を出てきた夫婦と、そこに一気に近寄るカメラ。
BGMには穏やかなピアノ曲が流れていた。
“こうして一つの夢を手に入れ、
絆を取り戻した寺岡夫婦。
彼女たちの幸せは今・・・
スタートラインに立った”
ナレーションで締められたVTRが終わる頃には、
俺の周りにいた報道スタッフさん達はもれなく全員が鼻をすすっていた。
「・・・・・・・・・・・・・・。」
感動的なストーリーだったと同時に、この幸せを壊した硫酸魔への憤りが強くなる。
・・この女性がどうして恨まれ・・・・