The Last -凶悪-
――――――
「待たせたな。」
『・・・・・・・・・・。』
今度のヒデさんは、天井ではなく真っ直ぐに俺を見ていた。
その後ろに、都内全域と思われる地図が貼られたホワイトボード。
プロジェクタからは何やら誰かの戸籍情報。
“準備万端”な雰囲気がひしひしと伝わる。
『神野くん。私が春に教えた内容を覚えていますか?』
「・・“先入観を捨てろ”・・。」
『普段だったらこんな危うい事はしませんが、
今回は椎名班長の為にも、
速やかに被疑者を確保したい。
・・だから博打に出ようと思います。』
「・・・・?」
『当時の椎名班長、堺班長が調べた捜査調書は・・もう一切アテにしません。』
「!?」
『余計な情報・・先入観を一切排除して、
真実をもう一度見つめ直しましょう。』
「ちょっと待った。
という事はつまり・・?」
『話を聞きに行けと命じておいて申し訳ございませんが、山本氏の証言も無視します。
そもそも、君も疑問に思ったように、
山本氏の証言には曖昧な点が多すぎます。
勘を信じる君を否定するつもりはありませんが、今回は私の顔を立てて頂きますよ?』
「・・・分かりました。」