The Last -凶悪-
――――――
一軒目で初めて飲んだビール。
何の味もしなかった。
見る見るうちに顔が紅くなって呂律がおかしくなった社長さんと同じ杯数を飲んだけど、
私には何の変化も無かった。
・・・・と思っていたのに、
仁王立ちさんが作った“かくてる”というお酒を一口飲もうとグラスを持った瞬間、
一気に私の視界がグニャグニャと回り出して、
気がつけば・・角を左に曲がった先にあるトイレに駆け込んでいた。
「・・・・オェッ・・オェッ・・。」
こんな感覚は初めてだった。
止まらない嘔吐に割れるような頭痛。
この状態が一生続くんじゃないかと思うほど、
胸いっぱいに広がる苦さが治まらな・・
“ガチャリ”
「!?」
鍵をかけたはずなのに・・扉が開けられた。
「・・・大丈夫ですか・・・?」
「・・なんで・・?・・オェッ・・オェッ・・。」
「・・あなたのようにお酒の加減も分からないお客様が籠もっても大丈夫なように、
マスターと私だけが知っている秘密の開け方で外からでも鍵は外せます。
ご安心ください。悪用して本当に用を足している所には入っていきませんので。」
ブツブツと呟きながらほとんど何を言っているのか聞き取れなかった。
でもそのまま中に入ってきた仁王立ちさんが・・
一杯のコップを傍に置いて背中をさすってくれた。