The Last -凶悪-
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「じゃあ・・また戻ってきてたんですか?」
「百姓仕事って・・ただ畑を耕せばいいわけじゃないんですよ・・。
近所付き合い、寄合、会合。
毎日のように“おもてなし”と“忖度”と“ヨイショ”の連続で・・。
父はそれが生きがいだったようで、
幼い頃からそのように教育されてきましたが、僕は人見知りなので。
弟に後を任せて戻ってきました。」
「・・人見知りなのに・・
バーテンダーというのも面白いですね。」
「・・・・・・・・・・・。」
「・・な、なんですか・・?」
「見つめられるのには慣れていませんか?」
「・・からかわないでください。」
「また会えたらいいなと思って、
このお店にしました。」
「え・・・・・。」
「・・・・・・今日は・・・・
とても晴れやかな目をしていらっしゃる。」
「・・・・・・・・。」
「バーテンを長くやっていると、
鍛えられるのはカクテルの作り方でも、
氷の削り方でもありません。」
「・・・・・・・・。」
「・・“嗅覚”です・・・・。」
「・・どういう事ですか・・?」
「何か良いことでもあったんですか?」
「!?」
「今のサトミさんは、
あの時の淀んだ目ではなく、
何か吹っ切れた目をしていらっしゃる。」
「・・・・・・。」
「・・美しいお顔になりましたね・・。」
「!!!」
「・・・・・・・・・・・・。」
「変な事・・言わないでください!」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・。」
「・・・可愛いと思った人に・・
“可愛い”と言うのはいけない事ですか?」
「・・・だから・・そういうウソ・・!」
「俺が冗談を言う男に見えるか?」
「!?」