The Last -凶悪-


「俺を連れてきた人達とは違って、神野刑事の目には一点の曇りもありませんね。

どうやらあなたは俺を硫酸魔だと確信しているようだ。」


「あんたに一つ、
良いこと教えてやろうか?」


「なんですか?」


「今起きている傷害事件と全く同じものが、35年前にも発生した。」


「らしいですね。
ワイドショーでやっていました。」


「未解決事件となって時効が過ぎたが、
俺達は犯人を断定した。」


「・・・・・・・・・・・・・・。」



「・・あんたの母親だ。」


「・・・・・・・・・・?」


「・・・・・・・・・・・・。」


「・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・。」


「その様子だとあんたも知らなかったようだな。もしくは父親だと思ってたのか?」


「・・・・・・・・・・・・。」


「氷室。もう終わりにしろ。

この事件における、“凶悪の根源”はあんたの父親 氷室コウスケだ。

父親から何をそそのかされたのか知らないが、“血”で人間の人格が決まると思ってるのか?


俺は1課にいた頃、多くの犯罪者を捕まえて、その数だけ多くを見届けてきた。

犯罪によって人生が変わるのは被害者やその遺族だけじゃない。

“被疑者の家族”も大きく狂わされる。」


「・・・・・・・・・・。」


「だけど、それでも彼らは・・彼女らは必死に現実と向き合って生きてる。

身内に犯罪者がいたとしてもそれがなんだ?同じ血なんて通ってないんだぞ?

小松サトミの血じゃない。
氷室コウスケの血でもない。

お前の体の中には、
お前の血が通ってるんだぞ!?」


「・・・・・・・・・・・・・・。」


「・・・・・・・・・・・。」


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