The Last -凶悪-


“男は背中で涙を流せ”

お袋の葬儀の時も泣かなかった親父に、
そう教育されてきた。



警察官になって、
派出所で地域の皆さんと触れ合って、


機動捜査隊に行って、
110番通報に走って、


刑事になって、
犯罪者との戦いに明け暮れて、


6課に来て、
全国の仲間との絆が芽生えて、



嬉しい時も、哀しい時も、
親父の教えを守って絶対に流さなかった。


・・・・・・・でも・・・・


「ヒデさん・・・・。あんたと出会えて・・本当に良かった・・・・・。」




目の前の箱に入る、真新しい革靴の上に、
ボタボタと涙が落ちたので慌てて拭った。





         The Last -凶悪-
 
            おわ・・














































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「松浦さーん。松浦マユさーん。」


「・・・はい・・。」


「診察室どうぞー。」






「松浦さん。ここ・・見えますか?」


「あぁ・・あぁ・・・はい!」


「間違いなく・・男の子ですよぉ!」


「・・アハッ・・スッ・・スッ・・
・・やった・・・!」


「“男の子が良いな”
って言ってましたもんね。」


「はい・・!」


「あとでエコー写真お渡ししますね。」


「ありがとうございます・・!」





「・・・松浦さん。

松浦さんのように、シングルマザーとして強く逞しく生きるお母様はたくさんいます。

出産はゴールではなくスタートです。

お母様方のコミュニティを紹介をしたり・・私達は、出産後も全力でサポートしますからね。」


「・・・ねぇ先生・・。」


「・・はい・・。」


「もう・・名前も決めたんです・・。」


「そうですかぁ!何て言うお名前ですか?」


「・・スッ・・・・スッ・・

お父さんのように・・
幸せを愛して欲しいから・・

“幸せに喜ぶ”って書いて・・
“コウキ”って・・・。」


「素敵なお名前ですねぇ。・・コウキ君。
お母さんと一緒に、お産頑張ろうねぇ。」



「大切に育てるからねコウキ・・。

松阪さんも・・お手伝いしてくれるって言ってくれたから・・。

私が立派な子に育てるからね・・
・・・・コウキ・・。」






         The Last -凶悪-
 
                終







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