The Last -凶悪-
「・・・1課に戻りてぇーなぁ・・。」
机に並んだ将棋駒を片付けながら、
思わず独り言が漏れる。
“再び捜査1課に戻りたいなら・・
また堺班の一員に戻りたいなら、
ここで一から学び直しなさい。
自分に足りない物、
自分が他人よりも優れている事。
刑事とはなんなのか?
初心に戻って勉強しなさい。”
6課への異動辞令を言い渡された時、
平松刑事部長に言われた言葉が蘇る。
「・・・・・・・・・・・。」
ヒデさんにはたくさんの事を教わった。
退屈な日々を過ごしてる時も、
応援要請が入って現場で走ってる時も、
どこか俺は・・・あの安楽椅子さんの背中を追っかけていた気がする。
一度、45連敗目を喫した対局の途中、
冗談交じりにヒデさんに、
「俺はいつ1課に戻れるんですか?」
って聞いた事がある。
その時は即答で、
『随分と自惚れた事を仰いますね。
“私を越えた”と私が判断するまで、
ネコ探しの日々は終わりませんよ?』
と若干叱られた。
「・・・あんたに俺が勝てっかよ・・。」
いつの間にか定時の鐘が鳴っていた。
再び独り言を漏らしながら・・
電気を消して鍵を掛けて、
広報部 地域PR課を出る。
第2章 完