The Last -凶悪-


「今回被害にあった男子生徒だが・・。」


「・・・・・・・・。」


「彼は所属する野球部で、
死に物狂いで努力を重ね、

最後の大会となる今年、ようやく背番号1を勝ち取っていたらしい。」


「・・・・・・・・・・。」


「例え一回戦で負けても、公式戦でマウンドに立っている姿をお母さんに見せたい。

母子家庭で仕事と家事の両立が大変な中、

毎朝特大のおにぎりと特大のお弁当を作ってくれたお母さんに恩返しがしたい。

彼は今年の夏に全てを賭けていたらしい。」


「右手首の粉砕骨折・・
硫酸による火傷・・・。

今年どころか・・もう・・

大好きな野球が二度と出来なくなるかもしれませんね・・。」


「【“幸せ”を壊して、
心に一生物の傷跡を残す】

3つ目の共通点、“犯行のターゲット”まで35年前と酷似してる。」


「硫酸を使うという点については、
当時、記者発表もしました。

マスコミは勝手に【硫酸魔】と名付けて騒ぎ立てたようですが・・

しかし、被害者については存命という事もあって、名前すら公表していません。」


「あぁ。仮に今回の犯人が“模倣犯”だったとしても・・・

この男子生徒を狙ったのはあまりに出来すぎてる。」



「・・・・・・・・・・・・。」


「・・・・・・・・・・。」


「35年前、あれだけ連続で発生した犯行が、何故かある時期からピタリと止まりました。

犯人の身に何か重大な事案が起きた・・

あるいは“死亡した”と当時は結論しましたが・・」


「昨日、平松刑事部長にも報告して、

今後“硫酸”が使われた傷害事件が発生したら、

どんな小さな事でもすぐに1課へ連絡するよう全所轄に通達をしてもらった。


椎名、もしまたすぐに発生したら覚悟を決めた方がいい。

【硫酸魔は生きていた】

35年前の悪夢がまた東京を襲うかもしれないぞ・・・!」





















 




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