The Last -凶悪-


「色々な舞台、ドラマ、映画のオーディションに参加しては不合格になって、

“役者”というよりは、“ラーメン屋のバイト”と言ったほうが良かった当時でした。」


「・・・・・・・。」


「次に受けるオーディションがダメだったら、夢を諦めて田舎に帰る事にしました。

・・と言っても既に気持ちは諦めてましたけどね。

最後の思い出作りに里見八犬伝のオーディションへ参加したんです。」


「・・・・・・・。」


「神野刑事は知らないと思いますが、

“鬼才 深作”・・深作欣二監督が直々に審査員を務めた新人発掘オーディション。

緊張しすぎて逆に肩の力が抜けたのをよく覚えてます。」


「・・・・・・・・・・・・。」


「終わって会場を出ようとした時・・肩を叩かれた。

振り返るとそこに・・柔和な表情を浮かべた深作監督が立っていた。

“お前良いなぁ”

人生で初めて、腰が砕けた瞬間です。」


「合格したんですね・・・。」


「役どころは決して主役級と言えるものではありません。

しかし・・私は田舎の両親に泣きながら電話しました。

両親も泣いてくれて、

親戚一同を引き連れて絶対に映画館へ行くと約束してくれました。」


「・・・・・・・・・・・・・・・。」


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