夏に溶けて、死んじゃえばよかった。



「だいすき」



そうやって、コップのなかの水が溢れるように。

透明で濁りなく、裏表なんてないものが、こぼれて。

想いを遂げてしまう。



悲しげに、それでもしっかりと笑う彼をみて、静かに私も微笑んだ。



まっすぐで凛とした、いまは横にされている青と紫の竜胆の花が目に映る。

ベッドの上で上体を起こしている私は、上からその花がみえた。


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