あなたの愛に包まれて
出会い
歩きにくい靴。

着心地の悪い服。

そんなことを考えていると車の後部座席のドアが運転手により開けられた。

愛想笑いは得意分野だ。

一気にフラッシュを浴びて目がくらむ。

それでも一歩踏み出して歩き始める。

たくさんの報道陣に囲まれながら赤い絨毯の上を歩きにくい靴のかかとを鳴らしながら歩く。

左右に首を振り、優雅に見えるようにゆっくりと手をひらひらとさせて振りながら歩く。

私は人形。

私の心はとっくの昔に乾ききって枯れてしまった。


そうでも思わないと今日までの日々をやり過ごしては来られなかった。
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