あなたの愛に包まれて
会いたいのに会えない
千晃は緊張しながら父の待つホテルの部屋に入った。
「少しはできないなりに考えたらしいな。」
千晃の父はいつものように千晃を見ないままに話し始める。
千晃は剣持が解雇されないようにとかなりの経営で成果を出していた。
父もさすがに納得すると思っていたが、父の考えが分からない千晃はそれでも不安だった。
「剣持。」
千晃の後ろに立っていた剣持に父が声をかける。
「はい」
剣持が頭を下げた。
「お前の解雇をかけて娘にはっぱをかけたんだ。」
剣持が驚きに顔を上げる。
千晃を見つめても千晃はまっすぐに父を見たままだった。
剣持は千晃が父から言われていたことを知らなかった。
「業績を上げなければ、剣持を解雇すると言ってあった。」
剣持は千晃の最近の頑張りが自分のためであったと知り、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

「業績は確かに上がった。」
千晃の父が顔を上げる。
「”業績は”な」
そういう千晃の父が不敵な笑みを浮かべた。
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