あなたの愛に包まれて
「お嬢様」
会社に戻り窓の外をただ見つめる千晃に、剣持がそっと話しかける。
千晃が振り返ると剣持は優しく微笑んでいた。
「申し訳ありませんでした」
そう言って剣持は千晃に頭を下げる。
千晃が剣持に近づきその方に触れる。
「ごめんなさい・・・」
千晃の言葉に剣持は頭を上げて再び微笑んだ。
「なぜ謝るのですか？謝るのは私の方です。今までお嬢様にはつらく、厳しく当たっていました。それなのに、わたくしのために努力されて、結果も出してくださった。心から感謝しております。」
「そんな・・・剣持さんがいつも私のためを思ってくださっていること、知っていました。」
「お嬢様」
剣持は千晃の頭にそっと触れた。
そしてそっとその手を動かし千晃の頭を撫でる。
千晃がその行動に驚いていると、剣持は今までで一番優しい笑顔で千晃の頭を撫で続ける。
「大きく、立派になられましたね」

はじめて、剣持がくれた最高の誉め言葉だった。
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