あなたの愛に包まれて
幼いころからずっと千晃のそばにいた剣持は何度もこうして千晃をほめたいと思ってきた。
頑張ればその頑張りをねぎらいたいと思っていた。それでも自分にはそんなことさえも許されない。
ずっとずっとこらえてきた言葉を千晃にやっと伝えられた剣持はすがすがしい表情で千晃に微笑み続けた。


千晃はその日からぼーっとすることが増えた。気が付けば窓の外を見ながらため息をついている。


ずっと求めてきた父からの愛情。
そんなもの絶対にもらうことはできないのだと知っていた。

ならば何か役に立ち、認められたいと思ってきた。

でも、父にとって自分はいらない存在なんだ・・・。

千晃は大きな喪失感の中で、匡祐のことを考えていた。
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