あなたの愛に包まれて
「お嬢様」
秘書が千晃の机の前に立つ。
「明日の3時より福山財閥との会議が入りました。会場はわが社の会議室です。」
千晃はいつものように窓の外を見ていた。
「失礼いたします」
そこに千晃に部下が紅茶を運んできた。
「結婚式の打ち合わせを進めていただくことになりました。」
千晃は何も話さないままぼーっとまどの外を見ている。
「聞こえていますかっ?」
秘書が声を大きくしてその声に千晃がびくっと体に力を入れた。
「きゃっ!」
『ガシャーンっ!』
部下もその声に驚き持っていた淹れたての紅茶が入ったティーポットを落としてしまった。
ちょうど千晃の真後ろで落ちたティーポットの熱湯が千晃の足にかかる。
「お嬢様っ!」
秘書と部下が千晃の心配をする。
「あつっ!」
部下がその足を拭こうとしてその熱さに思わず手を引いた。
秘書が思わず千晃を見る。
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