あなたの愛に包まれて
それでも千晃はぼっと二人を見たまま動じていなかった。
「熱くないんですか?」
秘書の言葉にも千晃は反応しない。
秘書が千晃の足に触れると確かにかなり熱く、千晃の足は真っ赤になり腫れあがっていた。
「病院に行きましょう。」
秘書が千晃を支えながら部屋をでる。
そんなときでさえも千晃は表情ひとつ変えない。

会社のエレベーターを降り一階につくと千晃の表情が変わった。
「剣持さん!」
そこには小さな花束を抱えた剣持がいた。
剣持は慌てて花束を隠す。
千晃は足を引きずりながら剣持の方へ歩き出す。
「お嬢様、車が待っています」
秘書の言葉に千晃は秘書の手を振り払い剣持のそばへ近付いた。
「どうされたのですか!?」
剣持も千晃の足を見て驚く。
「どこに行くの?」
千晃は両親に置いていかれる子供のような表情をしていた。
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