あなたの愛に包まれて

「千晃ーーっ！！」
あたりはすっかり暗くなっていた。
匡祐は革靴のまま海岸をひたすら走る。
千晃の名前を呼んでも冬になろうとしている海辺には人はいなかった。
人影すらない。

ここにはいないのかと匡祐が自分の携帯電話を出す。
「匡祐です。見つかりましたか？」
匡祐は剣持と助川に連絡をした。しかしまだ見つかっていないらしい。

通話を切ると匡祐は再び海岸を探し始めた。
砂に足をとられて転びそうになった時、ふと海岸にある小さな休憩所を見つけた。

ベンチと屋根のある休憩所は海岸よりも少し高い場所にある。
匡祐はそこからもう一度海岸を見渡して探そうと歩き出した。