あなたの愛に包まれて
千晃は自分自身のことを神崎がどこまで知っているのかがわからなかった。仕事を投げ出してここにいるということは、もう父にも気づかれているかもしれない。だとしたらどんな注意を受けるか恐怖だった。

自分が父から叱られるのはいい。どんな仕打ちも受ける。

しかし自分に加担したと勘違いされて、剣持や助川、匡祐・・・部下たちにもその罰を与えるのではないかということが怖くて仕方なかった。

父を考えると千晃の手が震え始める。
匡祐に両手を包まれても再びそのぬくもりが感じられない・・・。

千晃がうまく気持ちを言葉にできず「私・・・帰らないと・・・どうしよう・・・」と何とか言葉にしたことを匡祐はちゃんと悟っていた。

「神崎にはまだ千晃のことがばれてないはずだ。秘書と近しい部下は知ってるけど、行方不明の責任を自分たちも問われるのが怖いらしくてまだ報告はしていない。」
「本当に?」
千晃は不安そうな目で匡祐を見る。
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