あなたの愛に包まれて
「本当。むしろアリバイ工作に協力的だよ。今、千晃はけがまでしてるからな。それがばれたら大変だ。」
「私のけがなんて父にはどうでもないわ。きっと」
「まさか。やけどをして世間にさらせない状態になったかもしれないんだ。今回のやけどはきれいに治ると医師からは言われていても、財閥のマスコットとしては千晃のお父さんも許さないだろう。」
匡祐はまっすぐに千晃を見つめている。その目に迷いはなくて千晃は安心できた。
「今、千晃は自然食品の農場見学と新製品開発のために北海道に行っていることになってる。もしも千晃の秘書にお父さんから連絡が来たら助川につながるように手を打ってあるから安心して、しばらくうちでゆっくりしてほしい。」
「一緒にいていいの？」
千晃が匡祐を子供のような瞳で見つめる。
「もちろん。一緒にいよう。」
匡祐は千晃を抱きしめる。
「さぁ、お嬢様、匡祐様もお仕事の時間です。だだをこねずにお見送りください。」
剣持が微笑みながら懐かしい口調で千晃に伝えると千晃は匡祐から体を離して
「いってらっしゃい」と微笑んだ。
「いってきます」
匡祐は千晃の頬に触れるか触れないかのキスをした。思わず目をそらす剣持に、千晃と匡祐は笑った。
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