あなたの愛に包まれて
はじめての世界
「お嬢様、新作の承認をお願いします。」
剣持の言葉にフロアに並べられた服やドレスを千晃は手に取り始める。
「次の会議が一時間後にありますから、それまでに確認お願いします。さっとで構いませんから書類にだけサインを」
千晃は鋭いまなざしを剣持に向ける。
「私はチェックを怠りません。私の名前が企業の名簿に載っている以上、中途半端にはしません。」
千晃は以前から自分のまかされている企業の仕事に妥協はしなかった。

千晃のもとにあがってくる仕事はほとんど、ただ最終的な印鑑を押印するだけのようなものだ。それでも一つ一つの書類には絶対に目を通す。現物で確認が上がってくれば必ず手に取りもう一度様々な角度から見つめる。
自分で納得のいく内容ではないときは部下を呼び出し、説明や改善を求めることが多かった。

千晃は時間をかけて一つ一つの製品の確認をしながらメモを取り始める。
自分で身に着けてPRするときのために製品一つ一つの良さをメモしていく。

「お嬢さま、会議の前に昼食をお取りください。」
「いりません」
商品を真剣に見たまま千晃が答えると剣持が千晃の近くに歩み寄った。
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