あなたの愛に包まれて
「神崎の今後を考えますと大幅に縮小したほうがいい部門があります。」
会議で発言をする重役の声に千晃は現実に意識を戻した。
「福山から請け負った人材を切るのはどうでしょうか。それも懸命な判断だと思います。福山にはすでに何の義理もない。それでもあの事件の後に福山のしりぬぐいをしてきた。もう十分だと思われます。」
千晃は発言する重役に視線を送った。
「企業の規模縮小の中に人材に関しての対策案も考えることを提案します。」
意見を述べ終えると重役は自分の席についた。

こんな時、あなたがここにいたらなんていう・・・?

そんなことを考える局面はたくさん経験してきた。
それでもいつも千晃は一人で乗り越えてきた。

財閥を背負うことも、匡祐が残した福山の処理しきれない問題を片付けることも、匡祐への千晃なりの愛のかたちだった。
< 208 / 270 >

この作品をシェア

pagetop