あなたの愛に包まれて
「お嬢様」
剣持が部屋に入り、千晃の脱いだ靴を部屋の端へよける。

「大丈夫ですか?」
剣持の言葉に千晃が力なく微笑んだ。

「紅茶をお持ちしました。」
剣持が千晃に紅茶を渡す。
「ありがとう。」
千晃はすぐにカップに口をつけて飲み始めた。

剣持は感覚が鈍っている千晃のためにちょうど良い温度の紅茶を用意していた。

大きな窓の前から景色を見つめる千晃は幼い子供のように不安そうな目をしている。
迷子の子供のように何を頼りにしたらいいのかがわからないような目に見える。

小さく細い体に背負うには大きすぎる重すぎる荷物。
いつもその重圧に体も心もつぶれてしまいそうな千晃を剣持は見ていて心が締め付けられた。
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