あなたの愛に包まれて
夢でもいいから
「今日は夏の新作の化粧品の打ち合わせのあとに製菓工場の見学があります。そのあとは上期の予算案に関する会議が入っています。」
剣持がいつものようにその日のスケジュールを話す。
「それからお父様から明日にでも顔を出すようにと話がありました。」
「・・・そう」
千晃の父は財閥のトップとして仕事をしていた時の勢いを失っていた。一気に白髪が増えて、ほとんど家から出ない。体調もあるがそれ以上にすっかり気力を失っているように感じた。
財閥のことに関してはほとんど口を出さない。
めずらしい父からの連絡が千晃は少し気になっていた。

千晃は身支度を済ませると会議室へ向かった。

「本日は今年の夏のキャンペーン商品に関するご承認をいただきたく参りました。」
担当者の言葉に千晃の眉がピクリと動く。
「今回はテーマカラーを5つに分けてそれに関連した商品を発売する予定です。そのカラーにはパッケージからこだわっています。」
机に並ぶ夏の新作コスメをさらっと眺めた千晃は席につき担当者をじっと見つめた。
「赤、青、黄、紫、オレンジの５色の」
「やり直して」
担当者の言葉を遮り千晃が話す。
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