あなたの愛に包まれて
「やり直してください」
千晃はもう一度繰り返す。
「え・・・っと・・・どういう・・・?」
担当者がしどろもどろになる。
「今年流行しそうなカラーの調査が足りないようですね。」
千晃は常に新しい情報を入手している。
「絶対に失敗します。もう一度考えてください。カラーごとにテーマを持つのもいいかもしれませんが、その選択するカラーが古いです。」
千晃は担当者にぴしゃりと言い渡すと席を立ち会議室をでた。
その後ろを剣持がついていく。
担当者が「お待ちください。やっと会議の機会を取り付けたのに、また一からやり直していたのでは時間が足りません。」というと千晃は廊下へ出た足を止めて振り向いた。
「それが間違いです。あなたがここへ持ってきた企画も、商品も、私がチェックする段階を踏まずに来た。すべてここで押し通して発売する気持ちが見え見えです。私の目はそんなに甘くはありません。この化粧品ブランドが神崎のもとにある限り、私の承認なく勝手に物事を進めさせるわけにはいきません。」
千晃はそう告げると再び体の向きを変えて歩き出した。
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