あなたの愛に包まれて
「さっそく連絡しましょう!」
と剣持が携帯を取り出す。
千晃は剣持の手に自分の手を重ねて止めた。
「お嬢様?」
「・・・いいの。」
千晃が涙が流れる瞳を剣持に向けた。
「彼が生きてる。彼がちゃんと前を向いているってわかったから。それでいいの。」
「でも」
「いいの。」
千晃は匡祐が生きているか、前を向けているかがずっと気になっていた。

もちろん匡祐に会いたくないのかと聞かれたら会いたい。
会いたいに決まっている。

でも簡単には会えない。

匡祐が自分に会うときは、匡祐は悲しい真っ黒な過去を思い出さなくてはならないときかもしれない。
もしかしたら自分と再会することは匡祐がやっと捨てられた真っ黒な過去に引き戻すことになるかもしれない。
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