あなたの愛に包まれて
「この部屋の大きな窓の前から景色を見つめるお嬢様は幼い子供のように不安そうな目をしていました。まるで迷子の子供のように何を頼りにしたらいいのかがわからないような目に見えました。でもそんなお嬢様が迷子にならずに前に進めたのはこの絵が、この光がいつもお嬢様を支え照らしてくれていたからです。」
剣持は千晃の机の引き出しを開けた。
匡祐が机に近づく。

そこには匡祐の母の病室での結婚式で撮った家族写真があった。

ウェディングドレス姿の千晃とタキシード姿の匡祐。
人生で一番幸せな時間の写真だ。

剣持は自分の胸ポケットからあるものを取り出して匡祐に渡した。
「事故の日もお嬢様が身につけていたものです。」
匡祐が剣持に渡されたものを見ようと自分の手を開く、そこにはチェーンにつけられていた結婚指輪があった。

匡祐はその場に泣き崩れた。
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